Genocelと細胞シートを用いた膀胱組織の再構築
いつもお世話になっております。 京都医療設計の紺屋本(コヤモト)です。
今回は、Genocel®の応用研究が公開されましたので、その論文をご紹介いたします。
Development of Bilayered Bone Marrow-derived Cell-Gelatin Grafts for Augmentation Cystoplasty and Reconstruction of Bladder Tissues in Rats
Yoshihiro Inoue, Tetsuya Imamura, et.al
The Shinshu Medical Journal (Shinshu Med J),
Vol. 71, No. 3, pp167-177, 2023
研究背景
泌尿器分野では、神経因性膀胱や放射線性膀胱炎などの疾患によって生じる膀胱機能障害に対して、膀胱拡大術を行います。膀胱拡大術により、膀胱容量増大による貯蔵機能の改善が期待できますが、現在の方法である回腸を用いた手術では、侵襲性が高く、副作用が懸念されています。このため、回腸に代わる新規グラフトの開発が求められています。
本論文では、骨髄由来間葉系細胞(BMC)とGenocel🄬からなるグラフトを作製し、ラットの膀胱切開部に移植し、膀胱組織を再構築できるかを検討されています。
論文での使用方法
温度応答性培養皿を用いて作製したBMCシートとGenocelを下図のように重ね合わせたグラフトを4種作製しました。
その後、ラットの膀胱の頂部を切開し、切断面に上記のグラフトを置き、上から生分解性ポリグリコール酸不織布を置いて縫合しました。
移植4週間後には、Genocelシート2層のみグラフトを含む全ての移植部位にて、膀胱頂部の切開領域に組織が再構築されており、尿路上皮は多層に配列し、平滑筋層が確認できました。このことからGenocelの繊維上をレシピエント細胞が遊走していることが分かりました。
また、再構築した組織の平滑層の厚みは、細胞シートが2層、Genocelが2層からなるグラフトの移植部位が、他のグラフト移植部位と比較して、最も厚くなりました。
移植したBMCの一部は、平滑筋および、求心性神経マーカー陽性細胞に分化していました。